先週、仕事が終わる頃、歯が痛いのでこれから診てくれ、という電話があった。
かなり昔から通院していた患者さんだったけれど、ここ数年は会っていなかった。
家族の介助で来院し、レントゲンを撮影し様子を聞いてみると、ここのところ身体を壊し、心筋梗塞にも2回もなり現在介護施設に行っている、ということだった。
口の中を見るとあちこち重症なムシ歯だらけ。これでは何処が痛くなっても不思議では無い。
身体に問題が無く自分で通院していた頃も、何度も繰り返し口腔内の衛生指導を行ったが、なかなか実際にやってくれる人ではなかった。
いつもどこかしら治療をしていた記憶がある。
予防の重要性をいくら説明しても、残念ながら聞いてもらえなかった。
そういう人が自立出来なくなり介護が必要になると、さらに口腔内環境は悪化していく。
幾つかの介護施設で歯科衛生士さんを雇用したが、実際には、雇用された歯科衛生士さんが、食事排泄入浴などの日常生活の介護に忙殺されるようになってしまい、本来の雇用目的である口腔内の衛生環境の改善の仕事ができていない、と聞いた。
日常生活の介護が大変で、そこまで面倒を見られない、ということなのだろう。
口腔内環境の良し悪しはその人の健康状態を大きく左右する。
口腔内細菌が肺炎、糖尿病、心筋梗塞などの原因となる。
もっと口腔内環境の改善に意識を向けられるべきである。
患者さん一人一人の今後を考えながら、地域医療従事者の役割を、しっかり果たすためますます努力していかなければと、考えさせられた出来事だった。